旧女王と新女王
ベレーザvsレッズレディース
2009年10月24日
今年のなでしこリーグ優勝チームが既に決まっているとはいえ、新女王と旧女王の対決。ベレーザには昨年まで3連覇の意地があるだろうし、今シーズン戴冠したレッズは新女王の誇りにかけて負けるわけにはいかない。今年不調だったベレーザには澤も戻ってきていることだし、白熱するゲームになるだろうと、他の用事のついでに観戦した。
ゲームは好ゲームだったが、結論から言うと澤は出なかった。ベンチにも入っていなかったようだ。岩渕を育てるためかもしれない。しかし、澤の不在がベレーザの足枷となり、今シーズン不調の原因がそこに集約されているように感じた。
澤の不在の影響が顕著に現れていたのが大野忍のプレーだった。大野はキープ、ポスト、ドリブル、ラストパス、シュートといった、得点を取る部分に絡むすべてのプレーを高いレベルで実現できる選手で、それはこのゲームのピッチ上にいる中でも際だっていた。しかし何でもできるために、澤の不在で欠けた部分、つまりチャンスメーカーの役割を大野が担うことになり、1列下がってのプレーが増えた。するとこんどは得点への迫力が消えてしまったのだった。澤がいればもちろん澤がトップ下に入ってチャンスを作り、大野は得点を取ることだけに集中できたのだろうが、澤のいないチームでの大野は点取り屋のほかにチャンスメーカーの役割も求められ、攻撃の最初から最後まで自己完結せざるを得ない状況だったのだろう。むろん大野は何でもできるといっても、そこまでスーパーな選手ではなかった。一人に多くを求めたことが、結果としてチームの得点力を低下させたのだと思う。
ベレーザの状況はそんな感じだったが、それでもベレーザはレッズレディース相手に対等以上の戦いをした。前半の序盤はレッズの左サイドの連携に難があるとみるや、そこを崩しにかかり、それが難しいとなると中央へ振り替えてボランチから前線へスルーパスを送り込む。前半の終わり頃にはレッズの中央のブロックをサイドへ動かしてバイタルを突こうとする動きも見られたし、臨機応変と言っていい戦いぶりだった。
対するレッズの前半はこちらも右からの攻撃が目立つ。土橋と柳田のコンビでの崩し、あるいは中盤で奪ってからの速攻。一人として手を抜かずに前線からプレスを掛け続けて、ベレーザほどの強さはないが、よく訓練されているチームとの印象を受けた。
前半はそれぞれがそれぞれの強みを生かして1点ずつ取る。
ベレーザはボランチからのスルーパスを受けた大野がそのまま敵陣へ切り込み、ニアサイドの深い位置からクロス。ファーサイドの選手のシュートはキーパーにブロックされるものの、跳ね返りは大野の足元へ。それをきっちり決めて先制。対するレッズは時間を置かず、こちらは縦パス一本に抜け出した北本がゴールの左、ペナルティエリアの深いところでキープして、入ってきた安藤にクロス。これを決めて同点。そのまま一進一退の攻防で前半が終わる。
ところが後半に入ると一変する。ベレーザはフォーメーションを4ー3ー3に変更。MFの3人がセンタハーフのような位置取りで、DFとあわせて7枚でブロックを作り、数的優位を作ることでレッズの高い位置からのプレスをかわす。同時に3枚のFWはレッズのDFラインを引っ張って、中盤にスペースを作る。レッズのボランチはDFラインが引くものだからぽっかりと開いた中盤の真ん中で前線からのプレスに加わるべきか、守りを堅くすべきか、ポジションが曖昧になる。ボランチの曖昧なポジション取りはバイタルにスペースを作り、そのスペースに3枚のFWのうち誰かが交互に入っては楔のパスを受ける。レッズはこのスパイラルにはまって抜け出せない。ベレーザが一方的にボールを保持して攻める。しかしベレーザはポゼッションできると今度は決定的なチャンスを作れなくなる。というのも押し込まれたレッズは、それによってボランチの役割とポジションが定まり、それはそれでポジションバランスがよくなって、堅固な守備陣を構築できるのだった。
かくして戦線は膠着。ベレーザ最大のチャンスがカウンターから前線の3人だけで完結の攻撃だったあたり、作戦の変更が良かったのか悪かったのか判断つきかねるところ。レッズは練習してきたことに関しては非常に力強いが、それ以外への対処がどうももうひとつ。その中でも気になったのはボランチの展開力のなさで、途中からDFの熊谷を一列上げたのは間違いなく展開力に期待してのことだったが、時間がなかった。結局、一方のストロングポイントが他方のウィークポイントと噛み合う形になってしまい、それ以上得点が入らずタイムアップ。
白熱の好ゲームだったのだけど、おそらくどちらにとってもなんとなく消化不良のゲームだったと思う。


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